安達誠司さんの「ユーロの正体」を読みました。
「円高の正体」を読んで以来、私はこの方のファンになりまして、新作も買いました。幾つか重要なことが書かれています。
不況時に消費税を上げたり財政支出を抑制すると、ますます景気が悪くなり名目GDPが低下して、結局税収が下がってしまうということを指摘しています。日本でも1997年の緊縮財政から本格的なデフレになり名目GDPと税収が下がっていますが、ユーロ圏ではポルトガルやスペインがそのような状況に陥っています。そして、今後日本が更に消費税上げてはダメだという指摘につながっています。
金融政策の重要なところは予想インフレ率のコントロールにあると言えそうです。昭和恐慌時のデフレ脱却の際にも予想インフレ率の上昇があったことを考えると、インフレ予想にしない限り、デフレ入りを阻止できないしデフレ脱却もできない。インフレ率のコントロールの話をしているときに、日銀擁護派が金融緩和無効論-マネタリーベースを増やしても当座預金が増えるだけとかGDP比のマネタリーベースは十分あるよ、という事がありますが完全にズレた意見ということになります。
歴史的に予想インフレ率の上昇に効果があったのは、大規模な量的緩和、中央銀行のコミットメント(インフレターゲットなど)、中央銀行の国債直接引き受け、など。やっぱり、インタゲ+量的緩和が基本的な対策になりますかね。そうすると、アベノミクスの金融政策⇒財政政策⇒民間の投資を引き出す、といのは正しい順番ということが分かります。
ユーロの話からずれてしまいた。ユーロ圏はスペインなどの周辺国は緊縮財政で景気が悪いため、盟主ドイツも輸出の60%がユーロ圏向けであるため変調をきたしていると指摘しています。ドイツは輸出依存度が非常に高く40%とか、ユーロの国々が苦しいとドイツも楽観できません。バブル崩壊、低い予想インフレ率、緊縮財政、インフレ大嫌いドイツ、確かに日本が通った道を進んでいるのかも知れません。
まとまっていませんが、「ユーロの正体」は良書。ユーロについて学ぶとき最初に手に取ると良いのではないかと思います。しかし、安達さんは非常に鋭い。こういう人がヘッジファンドでもやれば良いんじゃないかと思います。